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2006年6月12日 (月)

「初恋」

「初恋」観て参りました。なんて言いましょうか・・・。この映画ヤバイっす。良過ぎて只良いとしか言えない。とにかくみすず役の宮崎あおいが良い、最高に良い。キシ役の小出恵介も最高。薄暗い地下のジャズ喫茶Bに集まってくる他のメンバーも良い。三億円事件があった当時の新宿を知っている人間にとってはただ涙。映画には出てないけど、まだ大ガード下には傷痍軍人がいてハーモニカを吹いていた(子供心にも哀れだった)。家では晩御飯のおかずに炒めた魚肉ソーセージが出ていた(今でもたまに喰う。うまい)。「パッチギ」でも思ったが、小出恵介はなんであの頃(昭和40年代)の若者の顔をしているのだろう。あの顔を見ただけで切なくなる。歌舞伎町、ゴールデン街あたりの雑踏の雰囲気。事件の現場となった府中刑務所あたりの風景も泣かす。私より年上の全共闘世代にはもっと何倍もたまらない映画だろう。三億円事件は当時三多摩地区に潜行していた学生運動家達のアジトを合法的に取り調べる為、公安が仕組んだ罠だった、という説がある。事実、学生運動は三億円事件後70年安保闘争を境に急速に沈静化していくが、その流れに逆らうかのように一部の運動家達の活動は先鋭化する。そして総括という名のもと行われたリンチ殺人事件や、浅間山荘事件で全テレビ局が一日中生中継を行ったことも影響してか完全に民衆から乖離し、終焉を迎える。この作品では三億円事件そのものの背景を全く違う形でとらえていたが、権力という怪物の不気味さは充分伝わった。寺山修司が「天井桟敷」で唐十郎が「黒テント」でアングラ芝居を開花させ、土方巽が暗黒舞踏を踊った。暗く鬱々とした嫌な時代だったと言えば言える。それが主人公みすずの境遇とダブり、言葉になる。「変えてやるんだ」と。キシとの初恋は儚く、しかし激しい思い出を残して消えた。アメリカングラフィティスタイルで終わるラストシーンに元ちとせのボーカルがかぶった時私は泣いていた。良すぎる、あまりに良すぎる。

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